インターネットとWebが誕生するまでのストーリーは、技術革新と社会的変化の象徴です。この記事では、インターネットの黎明期に焦点を当て、その時代の意義を探ります。
インターネットの誕生
インターネットの誕生は、1960年代にアメリカ国防高等研究計画局(ARPA)が開発したARPANETにまで遡ります。ARPANETは、異なる地理的場所にあるコンピューター間でデータを共有し、通信することを目的とした最初の大規模ネットワークでした。このネットワークは、パケット交換という技術を用いており、これによりデータを小さなブロックに分割し、それぞれが最適なルートを通じて目的地に送信される方式でした。
このパケット交換技術は、信頼性の高いデータ通信を可能にし、コンピューターネットワークの基礎となりました。当時、このようなネットワークは主に軍事目的や学術研究のために使用されていましたが、その後、次第に公共の利用にも開かれるようになりました。
ARPANETの成功は、複数の異なるネットワークを相互接続可能にするTCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)というプロトコルの開発につながりました。1983年には、ARPANETはTCP/IPプロトコルを採用し、これが現在のインターネットの基本的な通信プロトコルとなりました。
このようにして、ARPANETは現代のインターネットの基盤を形成し、世界中の人々が情報を共有し、コミュニケーションするためのグローバルネットワークへと進化を遂げました。インターネットの誕生は、情報技術、通信、社会における革新的な変化をもたらし、現代社会の基盤となる技術の一つとして位置づけられています。
Webの考案
1980年代後半、英国の物理学者ティム・バーナーズ=リーが、ヨーロッパ原子核研究機構(CERN)にて、情報共有を目的とした革新的なシステムとしてWebを考案しました。彼の構想は、異なる文書間で情報をリンクするハイパーテキストシステムに基づいていました。このシステムにより、ユーザーは文書間をシームレスにナビゲートし、関連する情報へ簡単にアクセスできるようになりました。
ティム・バーナーズ=リーの提案したWebは、インターネット上で動作する分散型の情報システムであり、それぞれの文書はユニークなアドレス(URL)によって識別されました。彼は、WebサーバーとWebブラウザの概念も同時に開発し、これにより、Webページの閲覧と作成が容易になりました。
バーナーズ=リーのWebの構想は、情報の普遍的なアクセスと共有を可能にするという彼のビジョンに根ざしていました。このビジョンは、後にインターネットという広範なネットワーク上で実現し、現代の情報社会の基礎を築くことになります。Webの考案は、デジタルコミュニケーションと情報アクセスの方法を根本的に変える重要なステップでした。
バーナーズ=リーが CERN で使用したNeXTcube。世界初のWebサーバ
参照:https://ja.wikipedia.org/wiki/ティム・バーナーズ=リー
ティム・バーナーズ=リー
参照:https://www.w3.org/ja/press-releases/2017/tbl-turing-award/
WorldWideWeb
1990年、ティム・バーナーズ=リーがCERNで開発した最初のWebブラウザでありエディタでもある「WorldWideWeb」は、Webの歴史において重要なマイルストーンでした。このブラウザはテキストベースのインターフェースを備えており、当時は非常にシンプルなものでしたが、Webの基礎となる構造を築くのに不可欠な役割を果たしました。
「WorldWideWeb」は、ユーザーが文書を作成し、ハイパーテキストリンクを介して他の文書に簡単にアクセスできるようにするという、Webの基本的な概念を実装していました。このブラウザにより、情報は相互にリンクされ、ナビゲーションが容易になりました。
当時のこのブラウザは、現在のWebブラウザのような高度な機能やグラフィカルなインターフェースを持っていませんでしたが、Webの基本的な原則や機能を示すものでした。ユーザーはテキストコマンドを使用してWebページを閲覧し、新しいページを作成することができました。
「WorldWideWeb」の登場によって、初めてWebが実際のツールとして使われ始め、情報の共有とアクセスが大きく促進されました。これは、後のWebブラウザの発展において基礎を築いたと言えます。初期のこのステップは、Webの進化において非常に重要な一歩であり、情報技術の未来に向けた大きな飛躍でした。
世界初のWebページ
1991年にティム・バーナーズ=リーによってCERN内のサーバー上で公開された最初のWebページは、Webの歴史の中で非常に重要な役割を果たしました。このページは、Webが何であるか、そしてどのようにWebページが作成されるかという基本的な情報を提供していました。
この初期のWebページは、ユーザーにWebの概念を紹介するとともに、Web上での情報共有の新しい方法を示していました。ページはテキストベースで、HTML(HyperText Markup Language)を使用して作成されていました。当時のWebページは、現代のそれと比べると非常にシンプルな構造で、主にテキストとハイパーリンクで構成されていました。
この最初のWebページの公開は、情報の共有とアクセス方法に革命をもたらしました。それまで、情報は主に印刷メディアや限られたデジタルフォーマットで共有されていましたが、Webの誕生により、世界中の人々が容易にアクセスできるデジタル形式で情報を共有することが可能になりました。
また、このページは、他の研究者や開発者がWeb技術を理解し、自らのWebページを作成するための参考資料としても機能しました。このように、最初のWebページは、後に広がるWebのエコシステムの基礎を築く重要な出発点となったのです。
この世界初のWebページは現在もアクセスすることができます。
https://info.cern.ch/hypertext/
インターネットとWebの違い
インターネットとWebはよく混同されますが、実は異なる概念です。インターネットは、世界中のコンピューターネットワークを相互に接続する巨大なインフラストラクチャです。これにより、異なるコンピューターやネットワークがデータをやり取りできるようになります。インターネットは、電子メール、ファイル転送、リモートアクセスなど、多様なサービスとプロトコルをサポートしています。
一方で、Web(ワールド・ワイド・ウェブ)は、インターネット上で動作する情報共有システムの一部です。Webは、HTML(HyperText Markup Language)で記述されたWebページの集合体であり、HTTP(HyperText Transfer Protocol)を介してアクセスされます。Webページはテキスト、画像、動画などのリッチメディアを含むことができ、ユーザーはWebブラウザを通じてこれらのページを閲覧します。
簡単に言えば、インターネットは道路や高速道路のようなもので、Webはその上を走る車の一種です。インターネットは通信の基盤を提供し、Webはその上で情報を共有し、閲覧するための一つの方法を提供します。したがって、Webはインターネットの一部であり、インターネット自体はWebよりもはるかに広い範囲の技術とサービスを包含しています。この違いを理解することは、現代のデジタルコミュニケーションの基本的な側面を把握する上で非常に重要です。
インターネットとWebの誕生(第1回)のまとめ
この記事では、インターネットとWebの誕生について掘り下げてきました。次回は「インターネットにおける世界初のこと」に焦点を当て、Webがどのように進化し、私たちの生活にどのような影響を与えたかを見ていきましょう。
関連ページ:
誕生-インターネットの歴史(第1回)
世界初のこと-インターネットの歴史(第2回)
日本初のこと-インターネットの歴史(第3回)