ヒューリスティック評価とは、ユーザビリティの専門家が特定のデザインやインターフェースを評価する方法の一つです。1999年に出版されたヤコブ・ニールセンの著書「Designing Web Usability: The Practice of Simplicity」の中で「ユーザビリティ10原則」が提唱されたのが始まりです。
【ヤコブ・ニールセンによる「ユーザビリティ10原則」】
1.システム状態の視認性を高める
2.実環境に合ったシステムを構築する
3.ユーザーにコントロールの主導権と自由度を与える
4.一貫性と標準化を保持する
5.エラーの発生を事前に防止する
6.記憶しなくても、見ればわかるようなデザインを行う
7.柔軟性と効率性を持たせる
8.最小限で美しいデザインを施す
9.ユーザーによるエラー認識、診断、回復をサポートする
10.ヘルプとマニュアルを用意する
これを元にして、数々のヒューリスティック評価のためのチェックリストが生まれて発展してきました。チェックリストの項目は100から500を超えるものまであります。また◯△☓で評価するタイプや10段階で評価するタイプ等、様々なものがあります。そしてその内容は時代と共に変遷してきました。
それも当然です。ヤコブ・ニールセンによる「ユーザビリティ10原則」には普遍性がありますが、1999年に提唱されたものです。その後、スマートフォンの普及に大きく貢献したのは、2007年に発売された初代のiPhoneです。タブレットの普及に大きく貢献したのは、2010年に発売された初代のiPadです。1999年には、デバイスや画面サイズに応じてWebサイトのレイアウトやコンテンツが最適化されるレスポンシブもまだありませんでした。Facebookのリリースが2004年で、そして何よりもムーアの法則に言及するまでもなく、インターネット回線やデバイスなどの閲覧環境が飛躍的に向上しました。これらに対応するように、ヒューリスティック評価のためのチェックリストの項目は都度、改められてきました。
筆者は、ユーザビリティの専門家でもあり、Webサイト制作に携わって25年ですから、これまでにヒューリスティック評価を実施することが多々ありました。ヒューリスティック評価のためのチェックリストの項目が時代と共に変遷してきたのも経験してきました。
それで、本記事のタイトル「コーポレートサイトのトップページのヒューリスティック評価をするための30項目」に戻ります。
様々に経験をしてきましたが、Webサイト全体のヒューリスティック評価をするためのチェックリストではなくて、トップページ(だけ)のヒューリスティック評価をするためのチェックリストは扱ったことがないことに気が付きました。そのような経緯で、作成をしてみました。
尚、本ブログは、企業のWeb担当者に向けてのものです。企業のWeb担当者のリテラシーにも幅がありますが、上級者だけでなく中級者にとって使いやすいように、初級者も専門用語を検索して調べれば分かるように、極力かんたんにしたく、30項目に絞っています。
コーポレートサイトのトップページ(だけ)のヒューリスティック評価をするための30項目
目的
1 | Webサイトの目的およびターゲットが明確か |
2 | Webサイトの訪問者に期待するアクションが明確か |
3 | Webサイトの訪問者の閲覧環境に配慮しているか(パソコンとスマートフォンなど) |
ナビゲーション
4 | グローバルナビゲーションは分かりやすい位置に設置されているか |
5 | グローバルナビゲーションの数は適切か |
6 | メニューは体系的に纏められているか |
7 | メニュー名は分かりやすいか |
8 | コンテンツに合った見出しが付けられているか |
9 | パンくずリストは設置されているか |
コンテンツ
10 | 重要なコンテンツが表示されているか(下層ページへの導線があるか) |
11 | 更新された内容が明示されているか |
12 | 運営者情報や個人情報保護方針・プライバシーポリシーへの導線があるか |
13 | サイト内検索が提供されているか及びサイト内検索の利用にストレスはないか |
14 | サイトマップへの導線があるか及びサイトマップの利用にストレスはないか |
15 | 問い合わせの多い項目を纏めたページが存在するか |
16 | 問い合わせ方法が明示されているか |
デザイン
17 | その企業「らしさ」があるか |
18 | ページ全体でデザインの一貫性があるか(トーン&マナーの統一) |
19 | 印象に残るか |
20 | 重要なコンテンツが重要と伝わるか |
21 | 文字のサイズは読みやすい大きさか |
22 | 文字の色はコントラストが明確で読みやすいか |
23 | 行間を適切に確保してあるか |
24 | 機種依存文字は利用していないか |
25 | 画像は高解像度であるか(Retineディスプレイ対応など) |
26 | アイコンは分かりやすいか、サイズは適切か |
27 | フォントの選択には意図があるか |
28 | リンク以外の文字に下線が使われていないか |
29 | リンクの色はコントラストが明確か、未読リンクと既読リンクは区別できるか |
30 | リンク切れがないか |
まとめ
今回は、企業のWeb担当者に向けて、コーポレートサイトのトップページ(だけ)のヒューリスティック評価をするための30項目をお伝えしました。粒度が揃っていないではないか!『その企業「らしさ」があるか』とは何だ?意味が分からない!などの批判もあるかもしれませんが…お伝えしました。
◯△☓で評価する、10段階で評価する、などは、ケースに合わせてお使いください。
30項目で、かんたんですので、Webサイトリニューアルのリリース前にチェックする、競合サイトを比較するなどの際にお役に立てましたら幸いです。
また、ヒューリスティック評価のご依頼もお待ちしております。